買い物をするとき,値札のところに値下げ前の価格と値下げ後の価格が併記され,値下げ前の価格のところが線で消されているのをよく見かけることがある.
これは値下げ前の価格をアンカーにして値下げ後の価格がいかに安くなっているかを印象付ける効果がある.
このような効果をアンカリングというが,このようなことは日常生活の至るところでその効果を発揮している.
これは相場においても然りである.
トレードをするとき,値ごろ感で売買したり,直近の高値や安値などを意識してトレードすることも多い.それらの値が意識されるのは,アンカリングによるものと言える.
「アンカリングとは,なにかの決定を下す際,その決定とはまったく関連性のないはずのものごとに引きずられて,結論を引き出してしまう傾向をいう.」(『アリエリー教授の「行動経済学」入門 お金篇』,ダン・アリエリー&ジェフ・クライスラー,早川書房,2018年,p.126)
トレードをしていると,安値をつけて上がってきたところで買おうとすると,その買値が安値より高いと思ってしまうため,買うのを躊躇ったり,逆に,高値から落ちてきたところで買うときは,高値より安いと思ってしまうため,あっさり買ってしまうことがある.
このような行動を取ってしまうのは,直近の安値や高値がアンカーとなって,その価格を基準にあれこれ考えてしまうからである.
それ故,概して順張りしにくく,逆張りをしがちである.
アンカリングはトレードにおいても様々な場面でその効果を発揮していると思われ,アンカリングによって自分の判断が狂わされないようにしたいものである.